自分が住んでいる自治体のサイトが「使いにくい」と感じたときに改善してもらう方法
住んでいる都道府県や市町村のホームページ―それが県庁や市役所だったり、あるいは図書館や保健・福祉や教育などと言った地方公共団体が提供するサービスについての情報を提供するウェブページ―が「使いにくい」と感じたことはないでしょうか。
詳しい内容については後述しますが、「工業標準化法(JISに関する法律)」という法律に、国や地方公共団体は使いやすいウェブサイトを提供する努力義務があります。たとえば、はてなの本社がある京都府については、「京都府ウェブアクセシビリティガイドライン」というものを策定しています。
- 京都府ウェブアクセシビリティガイドライン(抜粋) −京都府ホームページ
- http://www.pref.kyoto.jp/guideline.html
アクセシビリティとは「近づきやすさ」といった意味があり、ウェブにおけるアクセシビリティとは、様々な利用者(障害者や高齢者)や異なる利用環境(OSやブラウザ)に拘わらず、そのウェブサイトから情報が得られる(=「使える」)ことを意味する。
また、このガイドラインでは、画面からの内容把握のしやすさや操作性のよさ等、ウェブの「使いやすさ(ユーザビリティ)」への配慮についても、その目的や内容は「使えること(アクセシビリティ)」と共通する部分が多いため、特に両者を区別せずに「アクセシビリティガイドライン」として規定を行っている。
京都府にはこのようなガイドラインがあるので、もしあなたが京都府のホームページを見て、なんだか「使いにくい」「わかりにくい」と感じたのであれば、これを根拠にメールで窓口に問い合わせみると良いでしょう。
京都府に限らず、様々な官公庁、地方公共団体にもこのようなガイドラインが設けられているはずです。ただし、多少見つけにくいものではあるため、根気よく探してみましょう(京都府の場合は、ページの一番下の「ご利用案内」から「サイトについて」という項目にガイドラインを見つけられます)。もしも見つからないのであれば、「使いにくい」上に、「どういう基準(=ガイドライン)」でホームページを作成しているのか、問い合わせるのも有効だと思います。その際、隣接する都道府県、市町村にはガイドラインが設けられているのに、どうして自分の住んでいるところにはないのか?と、問いただしてみるのも良いかと思います。
住んでいる自治体に限らず、戸籍を置いている、働いている、あるいは実家があるとか、親戚がいるなど、自分に関連する自治体についても物言いをつけることができるでしょう(その自治体に興味があれば、という前提ですが)。行政の情報公開や透明性*1 *2が叫ばれている昨今、まずはウェブサイトから注文をつけてみてはいかがでしょうか。
この文章を書いた背景など
上級者向けの内容を含みます。わからない人は読み飛ばし推奨。
JISには、JIS X8341-3「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第3部:ウェブコンテンツ」として、アクセシビリティについて定められているが、これが2010年中にも改訂・公示される運びになっている*3。
とあるが、これは次の工業標準化法の条文によるもの。
(日本工業規格の尊重)
第六十七条
国及び地方公共団体は、鉱工業に関する技術上の基準を定めるとき、その買い入れる鉱工業品に関する仕様を定めるときその他その事務を処理するに当たつて第二条各号に掲げる事項に関し一定の基準を定めるときは、日本工業規格を尊重してこれをしなければならない。
つまるところ、この努力規定によって、国及び地方公共団体はウェブページを作成されるべきと考えられる。
また、ワーキンググループの主査である、東京女子大学・渡辺隆行教授のNICTによるインタビュー記事JIS X 8341-3改正のポイントによれば、WCAG 2.0*4と整合性を重視しながら、JIS改正を目指した、とある。WCAG 2.0はHTML4などの(X)HTMLシリーズ、現段階では勧告候補であるが広く参照されているCSS2.1、Ecmaインターナショナルによって標準化されているECMAScript(JavaScript)などの上に成り立つものであるから、ウェブ標準が前提となる。
また、HTML5の1.9 Recommended readingにおいて規定ではないが、WCAG 2.0が参照されており、次世代ウェブサイトを考慮する観点からも、改正JIS X 8341-3を考慮することは有用であると考えられる。
「IE6はもういらない」――Web企業が撲滅キャンペーン、YouTube、3月13日にIE6など旧版ブラウザのサポート終了などといった報道がされており、WindowsXPにインストールされ、未だにシェアを保っているIE6*5はコンテンツ制作者にとって邪魔なウェブブラウザとなり、排斥しようとする動きがある。官公庁や地方自治体のウェブサイトをJISに適合させることにより、自ずとIE6に依存しないコンテンツが作成されるはずである。まずは行政から変えさせることにより、インフラ企業、ひいては一般企業や個人のサイトも、IE6のような特定のウェブブラウザに依存しないサイト―セマンティックなウェブとは言わないものの、ウェブ技術の観点から見て「まともな」サイト―が少しでも増えるのではないのかと考え、この記事を作成した。
*1:「官僚排除せず」 菅内閣、政治主導修正 :日本経済新聞
*2:民主党の枝野新幹事長「党運営でも徹底した透明化を進める」:日本経済新聞
*3:梅垣正宏氏のブログJIS X8341-3 改正版によれば、2010年8月発行にも発行される見通し、とのこと。
*4:WCAG 2.0(W3C勧告)日本語訳 [原題:Web Content Accessibility Guidelines (WCAG) 2.0]
*5:Firefoxのシェア下落に転じる、5月ブラウザシェアによれば、IE6は17%を占め、Firefox 3.6の15%を上回る。