血統の森+はてな

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authorをどう訳すか?ということについて

authorという単語について、「著者」と訳出するより、「作成者」と訳出した方がよいのではないか?というご意見。
現状は「著者」と訳出しているけれども、私自身は「著者」がベストな選択肢だとは思っていない。@naofenixさまの言われるように「作成者」と訳出するのも有力な候補だとは思う。しかしながら、以下の2点から現状の「著者」という訳語を当面は維持することにした。

1. 単純置換したときの影響が未知数

指摘されているのはポリグロット・マークアップについてだけれども、ポリグロットにおけるauthorの訳語を変えるならば当然HTML5.0HTML5.1仕様訳も変えなければならない(そうでなければ仕様間の整合性が保たれなくなる)。そして、(HTMLとも密接に関係する)CSS2.1仕様訳(と、私が訳しているCSS3仕様訳)も見直す必要があるだろう。となると、影響範囲は甚大であり、単純置換するだけでも結構な工数がかかる。また、他の訳語とのバランス、たとえばcreatorやeditorなどのいわゆる"作者"かそれに似た訳出をするだろう単語が仮に仕様書中に出てきた場合、authorを「作成者」としたときにそのような訳語と衝突しないかどうか確認する必要があるだろう。そして、大前提としてauthorを「著者」と訳すことは、間違いとは言えない(何よりも、辞書に書いてあるとおりの訳語である*1 *2。)見方を変えれば、費用対効果が悪いとも言えるだろう。

2. 著者の方が範囲が狭い

作成者というのは辞書に載ってないのでそれぞれ類似の単語を引くと、

計画や書類、また文章などを作ること。「予算案の―」「報告書を―する」

さくせい【作成】の意味 - 国語辞書 - goo辞書

書物を書いて出版する。著作する。「社史を―・す」

あらわす【著す〔著わす〕】の意味 - 国語辞書 - goo辞書

「作成」だとどちらかというと「ものを作ること」に重点が置かれるのに対し、「著す」とすると「書物を書くこと」に重点が置かれる。言い換えるならば、前者は少し広い意味で「作る」ことを表しているのに対して、後者はより純粋に「書く」ことを表していると言えるだろう。

私自身は、ウェブページやウェブサイトは「作る」ものであって、HTMLは「書く」ものだと思っている。プログラミングにおいても、プログラムは「作る」ものであって、プログラムを作るための言語は(別にC言語でもいいし、JavaScriptでも何でもいいのだけれど)「書く」と表現するのが広く用いられている感覚だと思う。とするならば、「作成者」とするよりかは「著者」とする方がその意味を的確に表現できるとは言えまいか。

まとめ

今回検討した限りでは「著者」という訳語は決して間違いではない表現だと思うし、ひいき目に見ればベターな表現だとも思っている。ただし、繰り返しになるけれども、「著者」という訳語がベストだとも思わない。HTMLが「書く」ものだという前提を念頭に置いた上で、今回のauthorに限らずより良い訳語があれば、積極的に取り入れていきたい。